No Title
(登場人物………越前・菊丸・桃城)
「おっチビ〜〜っ♪(どさっ)」
真後ろから覆い被さってくる何者か(誰だか検討はついているが)の重みに、
リョーマは思わず眉をしかめた。
「……何なんスか菊丸先輩…重いっスよ」
「実はさ、ちょっとおチビに聞きたいことがあるんだけど」
「聞きたいこと?越前にっスか?」
「うん、一度面と向かって聞こうと思ってさぁ〜」
「…何か、俺すっごくイヤな予感するんスけど」
「だいじょぶだいじょぶ、大した話じゃないからっ」
「あーもう、言いたい事があるんなら早く言ってくださいよっ…
俺、さっさと着替えて早めに帰りたいんスから」
「わかったってば、じゃあ、おチビに聞きたいことがありまっす!」
「何スか?」
「最近、彼女出来ただろ?」
「…ハァ!?」
「だっておチビ、最近なんか付き合い悪いじゃんか〜!
俺がマックで奢ってやるって言っても断ってばっかりだし」
「ちょっ、ちょっとエージ先輩、それは考えすぎなんじゃないっスか?
…確かに、俺が帰りは自転車で送ってってやるって言っても断られる日が多いですけど、
だからってコイツに恋人が出来たってのは、どう考えてもおかしいじゃないっスか…。
なあ、越前? いくらお前でも、それは…」
「桃先輩、それって俺のこと馬鹿にしてるんスか?」
「…え?」
桃城にとっては、リョーマのことを軽くからかってやろうと思って言った言葉だったが、
それは逆にリョーマの神経を逆なでする結果になったようだ。
「そりゃ俺だっていますよ、恋人ぐらいは…」
「………おチビ、今、なんて…?」
「だーかーら、恋人ぐらいいるって言ってんスよ。
俺、そうやって子供扱いされるの一番ムカつくんスよね」
「「!!??」」
しばしの硬直の後、色々な疑問を解決すべく、おそるおそる桃城が口を開いた。
「…え、越前、お前のこと子供扱いしたのは謝るけど、
その…、お前に彼女がいるってのがビックリして…」
「……そっ、そーだよっ、おチビちゃん!
俺らに1回もそんな話をしたことなかったじゃん!」
はっと我にかえった菊丸も、慌てて話に参加しはじめた。
「わざわざみんなに言おうと思わないっスよ。
っていうか、先輩達に話したら学校中に広まりそうだし…」
「ちょっと、どんなコ!?」
「教えろって、他のヤツには絶対に言わないからさ!」
「あっ、もしかして、良くテニスコートに見に来てるコとか!?」
「わかった、あの三つ編みの女の子だろ!?
地区予選の時に見たぜ、あのコわざわざお前のこと見に来てたじゃねえか」
菊丸と桃城のマシンガンのような質問攻撃に、リョーマは思わず溜め息をついた。
「……全っ然、違う。 もっと別の人」
「えっ、じゃあ誰だよ!?」
「てっきり、あの三つ編みのコだと思ったのに〜…
ちょっと、だれだれ?おチビの恋人って!?」
「菊丸先輩、いくらなんでも相手が誰かまでは教えられないっス…」
「えーーーー!!! なんでっ!?ずるいっ!」
「おい越前、ここまで聞かせといてそれはないだろ!? 誰なのかぐらいは教えてくれよ〜」
「……っていうか、他の人には一切そういう話するなって言われてて。
先輩達にちょっとでも話したら、俺あとでどんだけ怒られるかわかったもんじゃないっスよ」
「…お、怒られる?」
「なんか、周りにそういうこと知られたくないらしくって…」
「はー、向こうは恥ずかしがってんだ?」
「…な〜んかおチビ、そのコに尻に敷かれてるって感じだにゃ〜」
「そうっスか…?」
「うん。今までのを聞いてると、丸っきり向こうが主導権握ってるみたい」
「俺は尻に敷かれてるとか思った事ないけど…
でも、主導権は確かに向こうが握ってるかも」
「でしょ?」
「…とにかく。 そういう話はしちゃダメって止められてるから」
「な〜んだ、残念〜…」
「うっかり話したりしたら、本っっ当、どんな事されるかわかったもんじゃないっスよ…
これから1ヶ月はキス禁止とか、そういうの平気で言われそうだし」
「……するのかよ?チューとか」
「当たり前じゃないっスか、桃先輩」
「………………」
やっぱりアメリカ帰りは違う。
菊丸と桃城は、心の中でそう呟いた。
「そんなん、やってらんないじゃないっスか。
キスしちゃダメとか言われたって、俺にも我慢の限界ってもんがあるんスから。」
「まーな、健全な男子たる者、それは耐えられねーよな、耐えられねーよ。」
「大体、そんな事先輩達にバラしたりなんかしたら、俺……」
「?」
「絶対グラウンド50周は走らされる…」
「え……!?」
「……それじゃ、お疲れっス…」
目を見開いたまま、その場に立ちつくす桃城と菊丸に一言だけ言い残すと、
リョーマは帰宅の準備をするために部室に向かって行った。
2人の頭が正常に作動し始めたのは、それから数十秒ほど後になってから。
テニス部部長にして生徒会長、泣く子も黙る手塚国光と、
1年生のスーパールーキーであり、何事にも物怖じしない越前リョーマ。
彼らは実は、プライベートでは恋人として「おつきあい」をしているらしい。
その情報は、あっという間に部員中に広まり、
テニス部内の強者2人が交際しているという事実は、学校中でも随分と有名な話になった。
その事実によって、あの泣く子も黙る手塚部長は、
青学の天災、もとい天才の不二周助に半永久的にからかわれる事となった。
ちなみに、うっかり自分達の関係を先輩達に漏らしてしまったリョーマはというと、
随分と渋い顔をしながら、今日も元気に他の部員よりも多くグラウンドを走っている。
それを言ったらバレバレです、王子(笑)