ガムシロップ
心地よくて、穏やかで、ゆっくりと流れる時間に。
大石と手塚は、ただただ身を任せていた。
手塚は、いつだって自分の弱みを見せようとしない。
部活の練習中なんか、背筋をぴんと伸ばして立っているだけで周りの空気が引き締まる。
眼鏡越しに切れ長の瞳から発せられる視線はとても鋭く、そして冷たい。
絶対的な存在である彼は周りから見れば少し近寄りがたくて、話しかけるのに何かと躊躇してしまう部員も多い。
凛としていて、頑なで、常に強くあろうとする人間。
それが、手塚国光。
だけど、こうして大石の腕の中にいるときの手塚は、そんなことをあまり感じさせない。
伏し目がちになっているせいで、黒く長い睫毛が際だっている瞳は、とろんとしていて妙に色っぽい。
近くで覗き込むと、それはとても繊細で穏やかで、普段の視線の冷たさなどは微塵も感じさせない。
少しだけ赤らんでいる頬や、薄く開いた綺麗な形の唇が、大石の心を惹きつける。
警戒心など持っていないというような、完全に安心しきった表情。
こんな手塚を見ていられるのは自分だけなのだと思うと、つい優越感を感じてしまう。
思いのほか柔らかい髪の毛を梳いてやると、黙ってそれを受け入れ、心地よさそうに目を閉じる。
さっきから、彼の二本の腕はそっと大石の背中に回っていた。
仕草の一つ一つが、嬉しくて溜まらない。
ふと、彼が目を開けて、自分を見る。
じっとこちらを見つめて、何も言おうとしない。
手塚は、言いたいことはハッキリと口にする方だったので、こんな様子は珍しいと大石は思う。
なに、と問いかけようとしたそのとき、
手塚の唇が、大石の唇に軽く触れた。
唇を離したときの彼の表情は、少し笑っているようにも見えた。
そのまま手塚は、大石の肩口に頭を深く埋める。
大石は、それからしばらく、手塚の髪の毛を愛おしげに撫でていた。
心地よい時の流れに、身を任せたまま。
ガムシロップというタイトルは、とにかく甘々なストーリー性から命名(笑)。
ふと思いついたので書いてみました。 なので短いです。
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