例 え ば こ ん な ク リ ス マ ス

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「それにしても、俺達も3月になったら卒業かぁ〜…」
片手にポテトチップス、片手に炭酸飲料を持ちながら、菊丸がしみじみと呟いた。
「いまだに実感が湧かないよね」
「でも、高等部でもテニスは続けるんスよね?」
「うーん、タカさん以外はね…」
「あ、そっか…」
「うん、俺は4月からは寿司屋の修行だよ」
家が寿司屋の河村は、テニスをやめて店を継ぐための修行をする。
それは夏から決まっていたことなのだが、それでも何だか寂しく感じてしまう。
「でもすごいよにゃ、お寿司屋さん継ぐんだもんね〜。」
「みんなも何かあったらウチに食べに来てよな。
 とは言っても、学校でいつでも会えるんだけどさ」
そう言って、屈託のない笑顔を浮かべる。
「そうだよな、別に会えなくなるって訳じゃないんだから…」
「いや、これからなかなか会えなくなる奴もいるぞ?」
「え? …ああ。そうだな」
乾が話しかけると、大石は、まるでたった今その事に気付いたように手塚を見た。
話題の張本人はというと、我関せずと言った顔で炭酸飲料を飲んでいる。

「なあ、手塚。留学するのって、カリフォルニアだったっけ?」
「ああ」
これまた、そっけない返事が返ってくる。
「手塚がいなくなると、なんだか静かになっちゃうだろうね」
「?なんでだ? 俺は別に、うるさくした覚えはないぞ」
「そういう意味じゃなくて、なんだか気合いが入らなくなるだろうな〜って。」
「大和部長も残念がってるよ、きっと」
「どうしてそこで大和部長が出てくるんだ?」
「………………………」
恐るべし、天然。
こんな言葉が、おそらく全員の脳裏をよぎったことだろう。


手塚は、4月から留学が決定している。
夏頃には顧問の竜崎から話を聞いていたのだが、その時には「今は大会を勝ち抜くことしか考えられない」と言って先送りにしてきたらしい。
全国制覇を果たしてから、手塚はやっと留学への決心を決めた。
長い休みに帰ってこれるとはいえ、向こうに行ってしまえば少なくとも3年か4年は帰ってこられない。
目の前の彼はそれをちゃんとわかった上で、それでも手塚に助言をしたのだろう。
手塚が留学すると決めたのには、大石が少なからず関わっていると乾は推測していた。

「でも、やっぱり厳しい人間が1人いないと全体がダラダラしちゃいそうだよね」
「おいおい、俺だけじゃ駄目なのか?」
「ぜーんぜんっ、駄目!!」
「おいおい…」
何だか楽しそうに大声で叫ぶ菊丸に、さすがに大石も苦笑してしまう。






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