例 え ば こ ん な ク リ ス マ ス
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さっきの衝撃映像にどう対処していいかわからず苦笑しているだけの大石の元へ、騒ぎの張本人のリョーマがやってきた。
「大石先輩」
「どうした?」
「怒らないんスね、俺のこと」
「え…?」
「でも、何も言われない方が後でとんでもない事されそうで怖いかも」
「え、越前?」
「大石先輩って、正直、部長とどこまで行ってんスか?」
思わず、飲んでいた炭酸を吹き出すところだった。
「え??何だって?」
自分らしくないとは思うが、大石はとりあえずしらばっくれてみる。
「ごまかしても駄目っスよ。 さっき不二先輩に聞いたから」
げ、原因は不二か……!! まさか越前に話すなんて思わなかった。
「あのなぁ越前… その、そういう話はホンットに勘弁してくれないかな…?」
「すぐ否定しないって事は本当なんスね」
「…………………」
「あーあ、俺せっかく部長狙ってたのに〜。
そもそも大石先輩って、一番部長と一緒にいるし。
つーか、なんで大石先輩と付き合ってるって知らなかったんだろ」
俺もまだまだだね、と得意の台詞を言ってみせる越前は、意外とショックを受けてないようで、
それがかえって怖い、とも思ってしまう。
「今頃気付くなんて情報が遅いな、越前」
突然、後ろからにゅっと出てきた黒縁眼鏡の男は。
「い、乾っ…!」
「ってことは、乾先輩は前から知ってたんスね、部長と副部長のこと?」
「日々データを集めていればそのぐらいは簡単に察しがつくよ。
俺が推測するには、付き合い始めたのが2年の9月って所かな。」
さすがデータマン、事実と寸分違わぬ推測を立ててくるところが恐ろしい。
そんなプライベートのデータを集めたところで試合の時に効果を発揮するのだろうか、と疑問に思ってしまうが。
「前から思ってたんスけど、
部長に関する騒ぎ(注:争奪戦(笑))の時の副部長って、何かにつけてオイシイとこ持ってきますよね」
「そうだな、もともと手塚にとって一番近い位置にいるから、そういうタナボタ的なことも起こりやすい」
「特別な理由はないだろーって思ってたんスけど…何か、副部長ってズルい」
「言っておくが越前、俺はもう副部長じゃないし、手塚も部長じゃないぞ?」
「言われなくてもわかってるっスよ。」
「しかしまあ、越前ならもっと早くに気がつくと思ったんだが、不二に言われるまで感付かないとはな」
「んなこと言ってないで、早めにちゃんと教えてくれればよかったじゃないスか。」
「そんなデータを教えたところで、越前は手塚をいさぎよく諦めたりはしないだろうと思ってね」
「当たり前じゃないスか」
「(さすが乾、よくわかってる……って、え!?)
ちょっと待て、越前! まだ諦めないのか!?」
「もちろん。 でも、今んトコは引き下がってあげる」
「え?」
「でも、いつか部長が幸せじゃなくなるようなときがあったら、そん時は覚悟しててよね。
俺が全力で奪いに行ってあげるから」
「おいおい…」
「あ、文句言うんなら部長に言ってクダサイ。
俺に『追っかけてこい』だなんて、あそこまで人を惹きつけるようなことを天然で言う部長が悪いんだから」
さすがに、これには大石も苦笑してしまった。
越前を惹きつけてしまうようなことを無意識に言っているのだから、相当たちが悪いかもしれない。
とはいえ、そんな天然の手塚だからこそ、大石は手塚を好きになったと思うのだが。
「……確かにな。こりゃ、油断してられない」
「そうっスよ。 今は許してあげるけど、あの人が不幸になりそうだったらすぐに俺が飛んで行くんだから、副部長も気合い入れて部長と付き合ってなきゃいけないんスから」
「うわっ、なんか大変だな」
…やっぱり越前は油断できない。
大石は心の中で呟くと共に、後輩の真っ正面からの宣戦布告に、ただ笑うしかなかったのだった。
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まだ続きますよ〜