思考回路・橘桔平編






今日はいよいよ、全国大会の初日だった。
試合の合間に空き時間があったので、他の試合を色々と見て回っていたら、かなり興味をそそる奴がいた。

先輩と一緒に見に行ったその試合はS2が始まる直前で、両チームのプレーヤーがコートに出てきたところだった。
片方のチームの選手が出てきた途端に、会場内が急に静まり返る。
多分、そいつの纏っている雰囲気が、周囲をそうさせるのだと思った。
左手のラケットから放たれるサーブはとても精密で、
相手のプレーヤーがぴくりとも動けないまま、あっという間に1ゲームを取った。

とにかく圧倒的な強さで、そいつは試合に勝った。
相手のプレーヤーだって、ここまで大会を勝ち進んできたチームのS2選手だから、実力はあるはずなのに。
さすがにこっちも圧倒されて見ていたら、
その選手は関東ではかなり名の知れているプレーヤーで、俺と同じ2年生だと先輩が教えてくれた。
東京の中学の奴で、手塚と言うらしい。

試合が終わって、手塚がベンチに引き上げていくときに、一瞬目が合った気がした。





いよいよ準決勝の組み合わせが決まった。
手塚のいる学校がその中にいないかと思ったが、どうやら負けてしまったらしい。
大会は団体戦だからしょうがないのだが、一度ぐらいああいう奴と戦ってみたかった。
来年も全国で会えるといいと思う。





今度の4月に、一家揃って東京へ引っ越すことが決まった。
杏は、友達と離ればなれになるのは寂しいと言っていた。
今の学校はテニス界ではかなりの有力校だったので、ここから去るとなると、俺も残念だと思う。




東京に引っ越した時、俺と杏が編入する学校が決まった。
不動峰中というところで、一応、テニス部もあるらしい。




いよいよ明日、この街から引っ越すことになる。
気分転換も兼ねて、長かった髪を切ってみた。 頭が随分と軽い……。




テニス部に入部したのはいいものの、ここがまた随分と酷い所で、色々と大変だった。
あれこれトラブルがあった末、今は新しくテニス部を立ち上げて練習している。
俺について来てくれた1年生は、誰もいい奴ばかりで安心した。




地区の予選大会に出ることになったのだが、出場校のリストの中に『青学』の名前を見つけた。
要するに、あの手塚を始めとした青学メンバーと、地区予選で戦うかもしれないのだ。
東京にあるのは知っていたけど、同じブロックになるとは思わなかった。
なんだか自分の運の良さに感謝したい気にもなった。(本来は運が悪いというべきかもしれないが)




地区予選の決勝で、予想通り手塚に会った。
手塚は部長になったらしい。 まあ、あの腕前だったら当然か。
残念ながら、決勝戦では青学に負けてしまった。
とにかく予想外だったのが、1年生のレギュラーの越前。
何食わぬ顔でツイストサーブを打ってきたり、右手で打っていたと思えば左利きだったり。
その越前が、試合中に目をケガしたにも関わらず、そのまま試合を続行させた手塚にも驚いた。
部長だったら大事をとって棄権させるのが普通だと思うのだが、実際は、越前を止めようとしているのは副部長(ゴールデンペアの大石)だけで、手塚は一切そんなことを言わなかった。
確かに、手塚が越前と同じような立場だったとしても、あいつは試合の続きをやりたがったと思う。
部員の気持ちを汲んでやるのはいいと思うが、あれはどうなのだろうか?
まあ、越前本人は嬉しそうだったし、結果的には向こうが勝ったのだから、いいんだろうが……。

そういえば、試合の後に手塚と少し話をしたら、
手塚は俺がこの前まで九州にいたことを知っていたようだ。
どうしてわかったのかと聞いたら、「去年全国で会っただろう」と返された。
かなり髪型が変わっていると思うのだが、それでもわかったのだろうか。
人の顔を覚えるのが苦手そうな奴なので、当然俺のことなんか覚えてもいないだろうと思ったのだが。
しかも「コートの外から見ていただろう」とまで言われた。
向こうも気がついてたのか……
そういえば、手塚を話をした後の帰り際に、何故か不二周助に睨まれた。
理由がわからない。








これ絶対、小説じゃないですよね。(笑)
手塚と親しげに話をすると、不二に睨まれますからお気をつけて。
橘桔平編、とは書いてありますがシリーズ化は全くもって未定。無責任。



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